・特許法第101条4号の規定に関しても、第1審とは異なる判断がされている。同号は、方法特許の間接侵害に関する新たな規定で、裁判官は、「その物自体を利用して特許発明に係る方法を実施することが可能である物についてこれを生産、譲渡等する行為を特許権侵害とみなすものであって、そのような物の生産に用いられる物を製造、譲渡等する行為を特許権侵害とみなしているものではない」と判示している。
・たしかに、CD−ROMやDVD等の記録媒体に格納され販売されるプログラムプロダクトは、「物の生産に用いられる物」、すなわち、コンピュータの生産に用いられるものであって、「その物自体を利用して特許発明に係る方法を実施することが可能である物」ではなく、同号には該当しないということが言えそうである。
・この関係は、以下の図のように表すことが出来る。

CD−ROMやDVDといった記録媒体(控訴人製品)に格納されたプログラムがコンピュータにインストールされると、結果的に、アイコン特許の第1発明(装置特許)が生産されることになる。しかし、控訴人製品は記録媒体であるので、アイコン特許の第3発明(方法特許)を実施するものではない。この方法を実施するのは、コンピュータであるということになる。従って、控訴人製品をパソコンにインストールして、そのパソコンを販売すれば4号に該当することになる(それ以前に、このような行為は第1発明の直接侵害になるが...)。
・ただし、プログラムを格納したCD−ROMやDVDがコンピュータのドライブにないとソフトウエアが起動しないタイプのものは、すくなくとも形式的には、上記の「その物自体を利用して特許発明に係る方法を実施することが可能である物」にあたる可能性がある。しかし、その場合でも、ソフトウエアは、(全部または一部の)実行可能モジュールがメモリーにロードされた状態で実行されるため、CD−ROMやDVD自体を「利用して」アイコン特許の第3発明を実施したと言えるかどうかは疑問である。
・なお、裁判官は、この判断のあとで、「
ちなみに,前記(1)のとおり,既に,特許庁は,平成9年2月公表の「特定技術分野の審査の運用指針」により「プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体」について,また,平成12年12月公表の「改訂特許・実用新案審査基準」により「プログラムそのもの」について,それぞれ特許発明となり得ることを認める運用を開始しており,また,平成14年法律第24号による改正後の特許法においては,記録媒体に記録されないプログラム等がそれ自体として同法における保護対象となり得ることが明示的に規定されている(同法2条3項1号,4項参照,平成14年9月1日施行)。このような事情に照らせば,同法101条4号について上記のように解したからといって,プログラム等の発明に関して,同法による保護に欠けるものではない。」としている。今回のケースでは、もしアイコン特許が有効であれば、特許法第101条2号の方の間接侵害でCD−ROMの販売等を押さえることができたので、4号について上記のような判断がされても大きな影響はなかったと思われる。
この記載は、4号についての適用を否定したことで、プログラム等の発明について十分な保護がなされないのではないかという疑念が生じるのを危惧してのものかも知れない。